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ベトナム産チョコレートブランドMarou。人気の背景とタイのポテンシャルを考えてみた

先日、ベトナムのホーチミンに滞在し、1週間の時間を過ごしました。そこで気づいたのが、チョコレートビジネスの可能性です。今日はその話題についてまとめてみました。

人気チョコレートブランドMarou

ベトナム製のチョコレートにMarouというブランドがあります。ベトナム産のカカオ豆を使った、シングルオリジン(ひとつの産地のカカオからひとつのチョコを作ること)のチョコレートで、コンセプトからパッケージからとにかく洗練されている。チャネルも吟味されているらしく、東京の場合、オンラインで売っているほか、カフェやホテルで販売中。

バンコクでも、トンローにできたコミュニティモール・コモンズの中で見かけました(Maison Jean Philippeというブーランジェリーの一画)。フジスーパー近くのコーヒーが美味しいカフェ、セレシアでも確か売っていたような。

1枚80gほどで1500円前後という価格ははっきりいってお高いですが、にも関わらず売れている。世界の大都市に輸出されています。いまやチョコレートのブランド品の一つといってもいいでしょう。

ホーチミンのMaison Marouに行ってみた

そんなMarouの本拠地ベトナム・ホーチミンには、ここだけにしかない直営店があります。その名もMaison Marou。

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行ってみて良かったです。

  1. インテリアもディスプレイもセンスがいい
  2. 客の大半は外国人
  3. ケーキもコーヒーも美味しい
  4. 物販も充実している
  5. この店にしかないチョコレートが激うま

上記のことがわかったからです。

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手前のホワイトチョコレートムース、ずっと食べていたくなるほど美味でした

特に2ですね。なにせ値段が高いので、ベトナム人の所得を考えると、この店に来られるのは一部に限定されるでしょう。だから、客の大半を外国人が占めています。駐在の人もいるのでしょうが、ぱっと見た限り、旅行客が多い印象。ホーチミンに来たらMarouに行かなきゃ、と考える旅行者が多いんですね。つまり、ベトナムの観光人気に一役買っている。これはすごいことですよ。

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これまで高級チョコレートというと、ベルギーやフランス、スイス産が人気の中心だったと思います。メゾンドショコラ、ゴディバ、ピエール・マルコリーニ、トイスチャーなどですね。カカオ豆自体はアフリカ産でも美味しく仕上げるのはヨーロッパのブランド、と相場が決まっていましたが、Marouが使っているのはベトナム産のカカオ豆であり、ベトナムの工場で作っています。生まれも育ちもベトナムのブランドが世界のチョコレートファンを魅了するという構図は非常に痛快かつ魅力的ではないでしょうか。

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なぜベトナムのカカオ豆が世界から注目されているのか

ここで、ベトナム産のカカオ豆について調べてみました。

世界のカカオ豆生産量のトップはコートジボワールで165万トン(2015年)。次いで多いのがガーナで88万トン。コートジボワールはダントツです。

一方、ベトナムは3000トン。生産量では見劣りがしますが、いま栽培面積がぐんぐんと拡大し、生産量も着実に伸びています。というのは、品質に対する評価が世界的にも高いから。

チョコレートを作る行程では、カカオ豆の発酵が大きな役割を担っていて、発酵度が高ければ高いほど良いとされています。発酵がじゅうぶんでないとカカオ豆の発芽が進んでしまい、アロマやフレーバーが抑えられるんですね。

ベトナム産のカカオ豆の場合、この発酵度が高く95%。ところが、カカオ豆大国のコートジボワールやガーナのカカオ豆の発酵度は70%程度に過ぎません。世界のチョコレート産業がいまベトナムに注目している理由はここにあります。

もちろんMarouが人気なのは、豆だけじゃなく製造行程にも秘訣があるのでしょうが、もともとの素材の良さは美味しい食べ物の前提条件。ベトナムのカカオ豆あってのMarouなのです。

タイ産チョコレートブランドのポテンシャル

ところで、ベトナムで上質なカカオ豆が栽培できるのなら、同じような気候のタイでもいけるのでは? そう思いますよね。

でも、タイのカカオ豆生産量はわずか400トン。2000年〜2006年にかけては1000トンを超えていましたが、なぜかその後生産量が激減し、いまではずっと400トンあたりをうろうろとしています。

Marouに匹敵するようなチョコレートのブランドも見当たりません。MarouのようなBean to Bar(カカオ豆の仕入から選別・焙煎、成形までのチョコレート製造を一貫して行うこと)のブランドで有名なところといえば、カオヤイにあるチョコレートファクトリーが挙げられますが、世界的に有名かといえば違うでしょう。

oishiの創業者タンさんが奥さんとともに立ち上げたチョコレートのショップ、Melt meのコンセプトは「北海道のチョコレート」であって、タイ産カカオ豆の姿は影も形もなし。

そう。タイにおけるチョコレートブランドは、海外を向いていない。お客さんは観光客ではなく、タイ人なんですね。

これはタイの国内マーケットが大きいがゆえ。ベトナムはマーケットが小さく(高いチョコを買える層がまだ少ない)、国内消費に頼れないから、海外に目を向けるしかない。だからMarouは最初から海外に照準を合わせて、コンセプトからパッケージからチャネル、ディスプレイから何から何まで作り込んで、上質なブランドとして世界に売り込みをかけた。その成果がいま着実に出ているわけです。

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手前左側がこの店でのみ販売しているチョコ。

外に向かわざるを得ないベトナム、内向きのタイ。何かを彷彿とさせるなと思ったら、何のことはない。日本とよく似ています。日本も下手に国内マーケットが大きいから、外に出ていく発想が薄かった。で、いまになって市場縮小でバタバタしている。

そうならないうちにタイから、タイ産カカオ豆を使った上質なチョコレートブランドが出現することを望みたい。トンローのオシャレショップでMarouが手に入るとか喜んでいる場合じゃないですよ。厳密に言えば、ベトナムとは気候や土壌の組成・条件なども違うだろうし、上質なカカオ豆の生産は決して簡単ではないのでしょうが、ポテンシャルはあるはずです。

タイのカカオ豆を使ったタイの美味しいチョコレートブランドが、世界の大都市を席巻する。そういう日を望みたいと思ったMarouのショップ体験でした(もしかして生まれつつあるのかもしれませんが、それならそれでうれしいです)。

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